今週のお題「応援」
夕べ降った雪は、朝になると雨に打たれながら消えつつあります。
道路に積もるようにならなくてよかった。
昨日に続き、恩師のお話です。
わたしにとって2人目の恩師は、大学を出て管理栄養士として東京で働き始めた時に、大変お世話になったチーフコックさんです。
就職先は給食会社で、一番始めに配属されたのは大きな工場の社員食堂。所長と栄養士、調理師、パート、全部あわせると30人近くになる大きな現場でした。
朝昼晩の食事、喫茶、お弁当、宴会料理など提供する料理の種類も多かったです。
それらを作る現場をまとめていたのが、そのチーフでした。
当時40代の働き盛り、恰幅のいい身体と丸刈り頭が強く記憶に残っています。
和洋中華、パーティー料理、バター彫刻や氷の彫刻まで何でもこなすチーフは、他の調理師さんやパートのおば様方から絶大な信頼を受けていました。
普段は無口なチーフですが、現場に入るとムードメーカーでした。「おらおら、あと10分だぞー!」「はいいっちょできあがり!」
チーフがいるだけで現場の雰囲気が引き締まるし、絶大な安心感がありました。
いつもみんなのことをよく見ていて、腕がいいのに調理師の資格を持っていない調理員さんに資格試験を受ける様に勧めたり、わたし達栄養士にもいつもねぎらいの言葉をかけてくれました。
忘れられないのはボーナスの時のことです。当時はまだ銀行振り込みではなく、現金を封筒に入れて手渡しでした。
チーフはいつもその封筒を、事務所の自分の机の上に無造作に置いていました。その封筒がまた見事にその厚みで立つのです。
なぜこんなことを?とチーフに聞いたことがあります。その答えは「事務所に入ってきた調理員がこれをみるだろ。そしたら自分もチーフになればこれだけ金がもらえるって、がんばるだろ?」
チーフには調理についてもいろいろ教わりました。包丁の研ぎ方、サンドイッチの切り方、オムレツの作り方…
フライパンで卵をかえす感覚をつかむために「卵の代わりに布巾をたたんでやるといいよ」と教わりくりかえし練習しました。
オムレツが得意料理になったのも、チーフのおかげです。
カッコよくて、情が深いチーフコックさん。この方に出会えて本当に幸せでした。