今週のお題「応援」
今日も季節外れに暖かい一日でした。
明日はまた冬に戻って風が冷たくなるようなので、しっかり防寒して出かけます。
きょうは恩師3人の最後、管理栄養士の大先輩についてお話しします。
長男が中学生の頃、縁があって管理栄養士として幼稚園の給食の調理担当として働くことになりました。
それまでは管理栄養士としてほとんど事務仕事しかしたことがなかったので、調理はやってもほんのお手伝いくらいで、本格的に食材切り、米炊き、焼き物、揚げ物、煮物など全部をやるのは初めての経験でした。
自分にできるかどうか自信がなかったのですが、「通勤時間も電車で30分くらいだし、6時過ぎには家に帰って来られるんだから、やってみたら? いろいろ勉強になると思うし」という主人の言葉にも背中を押されて、勤めることになりました。
給食スタッフは献立作成、発注、会計ほか事務作業すべてを担当し、調理もお手伝いいただく主任さんと、調理担当のわたしの2人です。
(その後給食人数も増え、栄養士さん1人が増員されました)
主任さんは小学校の管理栄養士を長年されてきたベテランの方で、調理も指示を出すだけではなく手も動かして、わたしよりはるかに手早くきれいに作業してしまうという、一緒に働くのがつらいくらいにできる方でした。
園児と職員さん合わせて150食ほどを作るところからスタートしたのですが、わたしにとって日々失敗と勉強の連続でした。
主任さんはいつも一番始めに厨房に入り、大きな鍋いっぱいにお湯を沸かしてわたしが来るのを待っていてくださいました。
「あ、じゃがいもを水に浸してから調理するのは分かっているのね。ただ、肉じゃがの煮汁はそれじゃあ多すぎる。煮ているうちに煮崩れるよ。」
「最後にどんな状態で出来上がりにするか、そこを考えて食材の切り方、水や調味料の分量を考えなければ」
「食べた給食に卵のかけらが入っていて、それで給食が嫌いになる子もいるかもしれない。それを常に忘れないで」
叱られるときに言われることはどれも納得できるものであり、努力もしましたが、やっぱりへこんでしまう時もあります。いじいじと落ち込んでいると、主人が「言われたことに納得できてるんなら気にすることはないよ。叱ってくれるってことは、できるって思われてるってことなんだから」と、また理屈っぽいけど納得させてくれるフォローもしてくれて、時に泣きたくなるくらいに厳しい仕事を続けることができました。
この時に教わった大量調理ならではの材料の切り方、調理の順番など、家庭料理とは違うコツのいろいろは本当に勉強になりました。
「料理は応用力!」というわたしのモットーもこの時にできました。
料理のやり方に絶対的なものはなく、見た目、味、スピードなど何を優先するかで選択肢はたくさんあるのだということが理解できました。
栄養士として調理ができることは必須ではないですが、実際に調理ができるということは大きな武器になります。この時の調理の経験は、その後レシピを作ったり、料理講習会をするお仕事でわたしの強みになりました。
幼稚園での勤務は丸3年続き、主任さんが退職するのと同時にわたしも職場を去りました。山ほど叱られた3年間でしたが、辞めてから数年後お電話でお話しする機会があり、「一緒に仕事をしてきたのがあなたでよかった」といわれてとてもうれしかったです。
自分の不甲斐なさは自分が一番良く分かっていたし、栄養士として何年かやってくると、本気で叱ってくれる方もいなくなってしまいます。
そんな中、わたしを本気で育ててくださった主任さんには感謝しかありません。今も年賀状は欠かさずやり取りしていますが、ここ数年は新しいお仕事はされていないようです。自分自身にも厳しくて、パワフルに取り組んでおられる方でしたので、ゆっくりと骨休めしていただけるといいなと思っています。
これまでに挙げた3人の方以外にも、お世話になった人は大勢います。
いままで出会った方たちに直接恩をお返しすることはできないかもしれないけど、わたしがこれから後輩たちに、今まで受け取ってきたものを渡すことはできると思います。
そんな形で恩師から受けたものをバトンタッチしていきたいと思っています。