このところSF小説に浸っています。
最近読んだ「記憶翻訳者」という短編集がとてもよかったので、ご紹介します。
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主人公は自分と他人の感情の区別がつかなくなるほど共感力が強い、珊瑚という25歳の女性。
彼女は自分の持つ過剰共感能力を活かして、その持ち主にしか理解できない記憶を第3者にも理解できるようにする「記憶翻訳」をビジネスにした会社で働いています。
彼女が他人の記憶の中に入る描写は、まるで悪夢を見るようです。
でもその描写がとても分かりやすい言葉で表現されていて、イメージが広げやすかったです。
珊瑚の視点で物語は進んでいきます。
その語り口が関西弁なのには始めは違和感がありましたが、読み進めているうちに逆にスムーズに感情移入することができました。
「風牙」…珊瑚は自分を救い出してくれた今の会社の社長の記憶の中にダイブします。
これは電車の中では読めない…涙腺が崩壊してしまいました。
切ない、でも戻りたい記憶という、誰もがこころに持っているところを衝くのはずるいです。
「閉鎖回廊」…今度、珊瑚が探すのは過剰共感者として訓練を受けていたときの先輩の由兄ちゃんの記憶。
彼女を支える会社のスタッフたちが、とても魅力的でかつ心強いです。
「いつか光になる」…幼児虐待からの精神的治療のために過去の記憶を消す処置をうけたハルと一緒に仕事をすることになる珊瑚。
ハルの映画を観た記憶を珊瑚が翻訳していくうち、ハルの本当の目的が分かってきて…
ハルや今回登場の先生、そして社長のキャラクターなど見どころがいっぱいです。
「嵐の夜に」…ハルとの出会いで、珊瑚もいままで自分の中に閉じ込めてきた想いと向き合う決心をします。
このあとどうなるのか、「記憶翻訳者 みなもとに還る」に続きます。
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こちらも短編集です。
これから一話ずつ大事に読んでいきます。