春爛漫です。
庭もいろいろな花が開いて、華やかになってきました。
最近読了して面白かった本をご紹介します。
「熱帯」森見登美彦
「熱帯」という小説をめぐるおはなしです。
いろいろなひとがこの小説を手に入れて読むのですが、最後まで読み終わる前に本が姿を消してしまい、最後まで読むことができない…
途中まで読んだひとたちが、記憶をつなぎ合わせてその小説を<サルベージ>していくことから話が展開していきます。
「千夜一夜物語」が何度もモチーフとして出てきます。
このおはなしの中でも同様に、登場人物が次々と語り手になって、タペストリーのように物語を彩っていきます。
夜の喫茶店、骨董品店、屋台の古本屋、緑のアトリエ、不可視の群島、京都の節分祭、昭和19年の満州など、散々いろんなところに引き回されていくうちに、すっかりその世界に浸り込んでしまいました。
結構厚い文庫だったのですが、残りのページが少なくなってくるにつれ、謎が解けることよりも、この世界から出たくないという気持ちが強くなりました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラの旅が終わらないことを願うように、このお話も終わってほしくなかったです。
作者の森見登美彦さんの思うつぼに嵌まったわけですが、この方も本当に本を読むことが好きなんだなあと改めて思った作品でした。
読書は楽しいです。
価格:1,034円 |