最近一気に全巻8巻を購入してしまった漫画があります。
それは「チ。-地球の運動についてー」です。
以下ネタバレなので、まだ読んでいない方はぜひ読んでからご覧ください。
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呪いと希望、最後に祝福の物語
TVアニメーションを観て、原作も読んでみたくて購入したのですが、読み進めていくのがつらい…
主役と思った男の子があっさり死んでしまい、その子の残した地動説の研究を引き継ぐと思えた僧侶のバデーニも、研究理論ではなくそれを研究する過程の話を書いたオクジ―も、異端審問官に捕まって処刑されてしまうし、いままでの研究をまとめた本も燃やされてしまう。
一緒に研究に関わっていた、異端審問官の娘ヨレンタは、かろうじて生き延びる。
そして彼女は、バデーニの残したオクジ―の書いた文章を印刷して、世の中に広めようとするが、それもかなわない。
新たな主人公の女性ドゥラカが登場して、いままでの「地動説」を研究しようとしていた人々とは違い、「金」を集めるのが目的と言い切る。
ああ、これで今度の主人公は「異端者となっても真実を求める」という「呪い」から解放されるのか…と期待しました。
でも結局、ヨレンタがドゥラカに残した「感動を伝える」という言葉が呪いになって、彼女も自分ができる精一杯のことをやって、道半ばで死んでしまう。
ここまで読んできて作者が描きたいのは、主人公たちが望みをかなえてめでたしめでたしというはなしではないんだと、気がつきました。
物語の途中で、オクジ―が大学に入学して研究をしている世界がでてきたり、ラファウが自死しないで大人になっている世界も出てきます。
「もしかしたらこうなったかもしれない世界」なのですが、オクジ―はそこでも悩み、ラファウは自分の望む世界を作るために自分の思想を受け入れない人を殺します。
地動説を信じる側もC教会側(教会の中でも考えが分れている)も「絶対的な正義」ではない。
わたしが一番好きなのは、バデーニとオクジ―の処刑直前のシーンです。
いままで散々オクジ―のすることを否定してきたバデーニが、自分の研究は失ってもオクジ―の書いた本を残すために予防策をとったことをオクジ―に伝えます。
「復元されるのは君の文章だ。」
「…は??」
「上手くいく可能性って どれくらいなんです?」
「非常に低い。」
「それは素晴らしい。最後に期待のしがいがある。」
地動説の研究書も、オクジ―の書いた本も、すべて残ることなく消えてしまっても、「真理」や「感動」を求める思いはずっと引き継がれていく。
そんなお話でした。
ひとは何かを残すために生きるのか?
この作品を読んでまず思ったのは、「ひとは自分が死んだあと、それが無になると知っても何かを残すものなのか?」という疑問です。
研究をすることでも、絵を描くことでも、小説を書くことでも、なんでもいいです。
創作することにはどんな意味があるのか?
自分の人生の残りの時間なんて考えていない若い頃には、何か人の心に残るものを作り出したいと考えていました。
(映像とか、小説とか、絵とか)
だんだん自分の人生の残り時間を考えるようになってきて、自分が死んだら何も残らないと思ったら、いままで感じていた物に対する執着が薄れてきた気がします。
でも、創作することは楽しいし、他人の評価を受けなくてもいいとも思ったりします。
以前、「ターン」という北村 薫さんの小説を読みました。
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主人公の銅板画家の女性は、交通事故に遭い、気がついたら、事故に遭った日の朝に戻っていて、自分の他は誰も人がいない世界にいる。
そして、事故に遭った時間になるとまた同じ朝に戻る。
この戻っては繰り返す世界の中で、主人公は翌日になると消えてしまうのが分かっているのに、銅板画を作ることをなんども何度も繰り返します。
この小説を読んだ時、「自分なら、消えてしまうと分かっている作品を作るだろうか?」という問いかけを自分にしました。
心折れてあきらめてしまうかもしれない…
いま再びその問いに答えるとしたら、「作る」です。
「チ。ー地球の運動についてー」はアニメもお勧めです
NHKで放映されているアニメーションもとても見ごたえがあります。
オープニングのサカナクションさんの歌がとてもいい!
原作に合っているし、見終わった後も頭の中で、何度もリフレインします。
TVアニメについては前にブログで書いています。
結局、アニメ完結前に原作を読んでしまい、いまは「あのシーンはどうなるのだろうか」という目線で追いかけています。
原作を読んでから観ると、オープニングの全部のシーンの意味が分かって改めてすごいと思いました。