秋の夜長には読書ですが、もっぱら最近は職場のお昼休みに本を読んでいます。
久しぶりにSF小説を読んでみました。
マーサー・ウエルズ作「マーダーボットダイアリー」上下刊です。
SFの定義はさまざまな解釈がありますが、わたしにとってはSFは「if(もしも)の世界」を書いたものだと思っています。
「もしも、地球の文明が滅びてしまい、地表は人を食べる植物にすっかり覆われている世界で生き残るには」
「もしも、月につながるエレベーターを作ったとしたら」
「もしも、ある惑星で文房具たちとイタチ属が戦いを始めたら」
「もしも、感染力が強い細菌が世界中に広がってしまったら」
「もしも、あした世界が終わってしまうとしたら、残された時間をどう過ごすか」
もしもの世界で、登場人物たちはどうするのか?
今回読んだのは、「もしも、有機体の組織と機械で作られた、人型警備ロボットが自分の行動や考えたことを語ったとしたら」というお話です。
自分のことを弊機と呼ぶその警備ロボットは、かつて大量殺人を起こして記憶を消去されています。
そのあと再び警備任務に就くのですが、自分をコントロールする統制モジュールをハッキングして、自分の意志で行動できるようになっています。
「冷徹な殺人機械のはずなのに、弊機はひどい欠陥品です」
といいつつ、警備する対象の人間のためにいつもベストの判断を選ぼうと行動します。
「サンクチュアリ―ムーン」という連続ドラマが好きで、ダウンロードした映像を何度も繰り返し見ています。
「そのドラマを好きなのはなぜ?」
「ドラマを観れば寂しくないからです」
「人間と交流しなくても……ということ?」
顧客である人間と距離を取ろうとしながらも、人間から自分がどう見えるかを気にしている弊機は、とても人間臭いです。
コミ症で、冷静さと自分の感情の間で揺れている様子は、はがゆくてとてもいとおしく見えてきました。
「あなたは嫌いです」
「わかっている」
「本気ですよ」
「お前の認知度レベルは五十五パーセントだと報告しておいてやるよ」
「くそったれ」
「六十パーセントだな」
いろいろな人間たちや他のボットたちとの関わりの記録とその感想が綴られたのが、この「マーダーボットダイアリー」です。
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上下巻を一気に読み終えてしまいました。
きれいにまとまっているので、この先はないだろうと思っていましたが、続刊があるようです!
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またマーダーボットのボヤキが聞けると思ったら、とても楽しみです。