寒くなるという予報でしたが、とても暖かい一日でした。
ドライブに音楽って、わたしたちの世代では切っても切れないものでした。
お気に入りの曲を集めたカセットテープを用意して、定番の10本くらいがいつも車の中に置いてあり、その時の気分に応じて楽しい曲をかけたり、暗い曲をかけたり。
長距離ドライブの前には必ず新しいカセットテープを作って、その時に一番聴きたい曲を集めたリミックスを作ってドライブに臨みました。
カセットは45分から60分のものを使っているので、何度も何度も同じ曲を繰り返し聴き、一緒に歌ったりして覚えてしまうこともしょっちゅうでした。
入れる曲はロックにジャズ、日本のポップスやフォークソング、クラシックやアニメソングもありました。そうそう、映画が好きなので映画音楽も定番でした。
深夜の高速道路を走りながら大音量でクラシックを流していたこともあります。私はダッタン人の踊りが好きだったので、それを聴きながら道路と星と山しか見えない高速道路を走ったのは忘れられません。
高速道路と言えば、アニメ映画の「アキラ」のサウンドトラックをかけながら走ったこともあります。アニメの冒頭の、オートバイの集団が高速道路を走るシーンを見た時から、どうしてもやってみたかったのです。
音楽をかけながらドライブするというのは、道路を走りながら日常のひとつ隣にある非日常にアクセスする感じで、今生きている人生のほかにあったかもしれない世界を生きているようでした。
音楽は好きです。ドライブも大好き。そしてその二つが合体すると、映画館で映画を見るよりワクワクして、目的地にたどり着くことよりもそのまま走り続けることが目的になってしまいます。
子どもが生まれてからもいろいろな音楽をかけながら走り、子どもたちもいろいろな音楽を覚えました。渋滞を避けて深夜に実家に帰省する時などは、一家で合唱しながら走っていました。
子どもたちは、そのころに聴いた曲を未だに歌えます。いろいろな思い出と一緒になって、音楽とドライブはさらに密接に絡み合って、心のどこかに根を下ろしています。
子どもたちはもう家を出てしまっているので、今は主人と二人でドライブすることが多くなっています。今はラジオを聞くか、iPodに入れた曲を流しています。iPodには好きな曲を集めているのですが、なんか違いますね。カセットテープ一本に凝縮したこういう曲をこういう順番で聴きたいという思いが入っていないので、単なるBGMになっています。
それでも、主人が「きょうはこれを聴きたい」とジョー・サンプルのCDを入れて、それを聞きながらドライブしていたら、いろいろと思い出してとても心が震えました。あの時あったこと、あの時になかったこと、そんなものが全部頭の中によみがえってくるんです。
聴きホーダイのない時代の音楽、携帯電話がない時代の恋愛は、年寄りの繰り言になってしまいますが、やっぱりずっと心に残るものでした。
そしてこれからどれくらいドライブを楽しめるのかわかりませんが、またその時その時に音楽を聴きながら、新しい思い出を集めていくことになるのでしょう。楽しみのような、少し怖いような気がしています。